世界中で、LGBTの運動が行われている中、遂に台湾ではアジアで初めて「同性婚」を合法化する法案が可決されました。LGBTに対して、閉鎖的な日本でも、人事採用のESに性別欄を設けない企業が出てきたり、住宅や不動産の情報サイトSUUMO(スーモ)では、物件の特徴項目の一つとして「LGBTフレンドリー」を追加したりと、年々理解が深まりつつあります。

このように、世界中で男女という二つの括りを超えた性別に対して、ヨーロッパや北米だけではなく、アジアでも認知が拡大する中、アジアの中でもLGBTのカルチャーが根強いタイでは、LGBTの国会議員が入選したり、同性カップルに対して権利を認める市民パートナーシップ法案が可決されたりと、その広がりは留まるところを知りません。


タイが抱えるLGBTの影

微笑みの国とも称されるタイは、同時にLGBTフレンドリーな国としても知られています。その最たるものはニューハーフショーではないでしょうか。芸能人のはるな愛がタイで行われたニューハーフ大会で1位に輝いたことも皆さんご存知かと思います。その他にも、タイにはLGBT用の不動産、アパレルショップ、カフェが建設され、正に「LGBT先進国」と言えるでしょう。

しかしながら、セクシャルマイノリティに対して焦点が当たっている国にも関わらず、未だ同性婚については認められていないという実情がタイにはあります。 寛容な国にも関わらず、国の機関や大企業などでLGBTの人々が働こうとすると、まだまだカミングアウトしにくい現状があるのが事実です。

一方、同じくLGBTに対して寛容な国として知られる北欧フィンランドでは、2002年に同性カップル自体を認めたり、2015年に『ジェンダー平等と差別禁止法』が出来たり、2017年には同性婚までも認められています( *2017年の同性婚が認められた以降は、「同性登録パートナーシップ制度」は廃止となり、同性婚でまとめられた)。

このように、場所はかなり違いますが、セクシャルマイノリティに関して寛容であるという共通点がある一方、法律上の相違も見られます。

なぜこのような違いが生まれるのか、ゲイ幸福度指数12位(フィンランド)16位(タイ)のどちらにも住んだことのある、ひかるくんにインタビューしてみました。

参照: The gay happiness index, Romeo

タイとフィンランドを比較して

右が今回協力してくれたひかるくん
今日はよろしくお願いします!
ひかる
お願いします(^^)フィンランドに留学後、現在はタイに滞在中のひかるです。お願いします!!
早速ですが、タイとフィンランド、LGBTに関して理解が高いことで有名な2つの国に住んでみて、何を感じられましたか?
ひかる
そうですね、あくまで目に見える範囲での話をすると、タイにおいてLGBTの進出をより強く感じました。街中で働いているレディボーイや、クラブで歌っているドラッグクィーン、彼らを見ていると、タイという国において彼ら”LGBT”の存在が強く認知されていると思います。一方フィンランドでは、あまり見かけることはなかったですね。
なるほど、フィンランドでは思った以上にLGBTが容認されていないということでしょうか。
ひかる
いえ、一概にそうとは言えないと思います。実際にゲイ幸福度指数でもフィンランドの方が上位についていますし、その人たちがLGBTかどうかは、当たり前ですが見た目だけでは分かりません。特に、タイにおいてLGBTは産業の1つと化しています。実際MRT「Silom」駅付近では、ゲイの方々向けのクラブや風俗店が立ち並んでいます。売春に対して処罰を課さないとしているからこそ、返ってLGBTの存在が認知されていると言えます。フィンランドにおいては、そもそも風俗店のような店がほとんどないので、目に見えにくいだけかもしれません。
そうですね。産業と化しているからこそ街中で彼らを多く目撃し、そのような風潮があるからこそ、LGBTの人々が本当の彼らでいられるということですね。では、フィンランドが上位に来ているのはなぜでしょうか?
ひかる
フィンランドにおいては「教育」の力が関係していると考えます。僕は留学中、異なる5校において、主に英語の授業を見学させてもらいました。その1つで驚いたのが「教科書の内容」です。小学4年生の授業だったのですが、marriageという単語の横にsame sex marriage (同性婚)という項目がありました。同じページのコラムにも、ゲイの結婚に関する文章が載っており、いかにフィンランドという国が教育に力を入れているか、それを感じました。
教科書にまで配慮を行うことで潜在的に差別や偏見を生まないようにしているのですね。ところで、それぞれの国で差別や偏見を身近に感じたことはありますか?
ひかる
はい、タイにおいて何度か見かけたことがあります。確かにLGBTの進出は進んでいますが、客引きのレディボーイにストレイト(異性愛者)の人々が罵倒を浴びせたり、唾を吐いていたりするのは何度か見ました。ほとんどが夜中なので酔った勢いなのかもしれませんが、未だにそうゆうことはあります。意外なところで言うと、タイは「同性婚」はまだ認められていませんし、偏見を持っている人が一定数いるのも事実です。下記図表1(同性愛について「絶対に正当化できない」と答えた人の割合)と下記図表2(タイの LGBT で「差別を受けた経験がある」と回答した人の割合)を見てください。一見LGBTフレンドリーなタイにおいても約50%の人が何らかの偏見を持っていることがわかります(潜在的にはより多い)。
意外な一面ですね。およそ半分の人が否定的な意見を持っているとは知りませんでした。私自身、セクシャリティによって何らかの不利益を被ったタイの人の話を耳にしたことはありますが、未だ根深いのですね。
ひかる
はい、タイにおいて2012年に同性婚に関する草案が作成されたそうですが、2014年の軍事クーデター/政権交代により成立には未だ至っていないのが現状だそうです。
ではひかるくんが考える、タイとフィンランドの違いは何だと思いますか?どうすればより差別や偏見が薄まるのでしょうか。
ひかる
とても難しい問題ですが、上記のまとめとして1つ違いを挙げるとすると、アプローチの仕方だと思います。タイにおいては性産業(sex business)の1つと化しているため、好奇の目が避けられない状況にあると推測します。フィンランドのように教育という形でLGBTについて潜在的に認知させることは長い目で見て効果があるのではないでしょうか。
なるほど、このように根深い問題ですと、多方面からのアプローチを検討する必要があるのですね、今日は色々とお話ありがとうございます。
図表1 出典: タイ:「同性婚」法案の背景と課題

図表2 出典: タイ:「同性婚」法案の背景と課題

まとめ

このように、タイは「LGBT」に対して認知度は高いものの、未だ課題点は数多く残されています。UNESCOとタイのマヒドン大学の共同調査によると、LGBT2000人の若者のうち、31%が肉体的虐待を、29%が精神的苦痛(罵詈雑言)を、24%がセクハラを受けたことがあると判明しました。さらに彼らのうち7%は自ら命を断つ選択をしたという現実も無視できません。 このような結果を踏まえ、次回はLGBTの人々に対する考えを、複数のタイ人にインタビューしたいと思いますので乞うご期待下さい。

参考資料: Is Thailand Really LGBT Friendly?

タイ:「同性婚」法案の背景と課題 不安定な政治と不寛容な社会を乗り越えられるか

世界価値観調査(World Values Survey:WVS)

おすすめの記事