アジラボ | 飛び出せ日本!海外転職応援メディア

【タイ就職/転職】タイの社会保険制度はどうなっている!?

アジラボ編集部のアカウント

今回ご紹介するのはタイの社会保険制度の柱

「年金」と「医療保障」について!

滞在期間が浅く忙しいと、ついつい後回しになってしまいがち。

ということで、早め早めに知っておいた方が良いですよね?今回は「タイの年金」と「タイの医療保障」がどのような仕組みとなっているのか、外国人の私達も加入することは可能なのか?そんなあれこれについて分析していきます。

バックグラウンド

そもそも、タイという国は社会保険制度について定評があり、長い歴史がある国というわけではないです。というのも、貧富の差が激しいタイにおいて、保険をかける・お金を将来のために蓄えておくという概念自体が希薄だからです。

それを裏付ける客観的指標が以下です。

~タイ人のお金に関する意識~

タイ国立開発行政研究院(NIDA)がタイ国民2000人を対象に5月に実施した調査(2017年)

回答者の平均収入は月2万6470バーツ、平均支出は月2万1607バーツだった。


回答者の月収は「1万バーツ以下」が全体の35・4%、「1万1―2万バーツ」が25・2%、「2万1―3万バーツ」が11・3%、「3万1―4万バーツ」が5・5%、「4万1バーツ以上」が11・5%、残りは無回答だった。また、最高月収は100万バーツだった。


「貯金がある」は51・7%、「ない」は48・3%。


「借金がある」は68・1%、「ない」は31・9%。「借金がある」と回答した人の借金の平均額は56万5303バーツだった。



http://s.newsclip.be/article/2017/07/19/33604.html

上記からして、タイ人は一般的に「その場しのぎで良く、蓄えなくても良い」と言う考えが日本に比べて浸透していると言えます。

しかし、タイは年々高齢社会への一途をたどっています(詳しくはこちら

それを踏まえ、タイ政府は2000年突入後、次第に社会保険制度に本腰を入れ始めます。

特に2014年、年金制度に大きな変革がもたらされました。それが現在、タイの年金制度の主軸となっている老齢年金制度(SSF)

貯蓄を行うという概念が薄いタイで、どの程度積極的な加入者が存在するのか推し量りかねますが、タイの年金制度は比較的新しいのです(厳密に言うと昔から存在する年金制度もありましたが、国民の3割にあたる富裕層や軍人等のためであり、7割の農民は無保険状態が続いていました)

タイで年金をもらうには

まずは「年金」のお話。

外国人でもタイで年金をもらえるの?と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、端的に言うと条件を満たせば「もらえます」

私たち日本人が2019年現時点で年金をタイで受給するには主に2つの道があります。

①日本の年金をタイで受け取る

利点: 母国語で手続きができる

問題点: 手数料がかかりひかれてしまう、財政赤字のため、もらえるか分からない、社会保障協定を結んでいないため「二重支払い」をしなければならない

➁タイの年金を受け取る

利点: 無駄な手数料がかからない

問題点: 年齢の制限、支払い額や期間に応じて受給額に大幅な変化が生じる、そして何より情報が少なくタイ語での手続き

ご存知の通り、日本は財政赤字がとてつもなく大きいです。国民一人当たり850万円とも言われるその借金額は、優に一般家庭の平均年収(およそ500万円)を超え、現在もさらに増え続けています。その結果、現在30歳以下の人々は年金が本当に支払われるのかどうか確実性に欠けるでしょう。

もちろん国によって、年金受給要件は変わりますが、大切なのは…

➀何年間保険料を支払えば➁いくら受給できるのか➂何歳からもらえるのかということではないでしょうか?

知っておこう! 「社会保障協定」


社会保障協定は、「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止)保険料の掛け捨てとならないために、日本の年金加入期間を協定を結んでいる国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする(年金加入期間の通算)ために締結しています。締結国は以下です。


ドイツ イギリス 韓国 アメリカ ベルギー フランス カナダ オーストラリア オランダ チェコ(※) スペイン アイルランド ブラジル スイス ハンガリー インド ルクセンブルク フィリピン


署名済未発効の国
イタリア スロバキア 中国
(※)2018年8月に現行協定の一部改正


https://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html

ご覧の通り、残念ながら現在、タイと日本はこの条約を締結しておらず、日本でいくら年金を納めていたとしても、タイで互換さえることはなく、タイの年金を受給するためには、1から払い直さなければならない、つまり先述した「二重支払い」のデメリットがあります。

タイ年金のいろは

年金と一概に言っても、タイの年金は「公務員用」と「民間企業従業員用」で法律、制度が異なります。

前者に「政府年金(税方式)」「政府年金基金(貯蓄型)」

後者に「➀老齢一時金」「➁老齢年金(2014年始動でメインストリーム)」という2種類があります

➀と➁は単に「社会保険料を支払った月数が180カ月(15年)に達しているか否か」ということ

未満の場合「①老齢一時金」

達していた場合「➁老齢年金(2014年始動でメインストリーム)」となります。残念ながら、自営業者や農民等は受給対象者外であり、この点で国民皆年金は達成されていません。(政府は非対象者を対象とした国民貯蓄基金を始動し、国民皆保険実現を目指しましたが政権交代等により歯止めがかかっています)

基本的な前提として、「満55歳に達しているか」ということも年金受給者となるために重要です。

まとめ

老齢年金を受給する条件

55歳以上で働いていない

社会保険料を支払った月数が180カ月(15年)に達している

支払額・受給額

給料の5%(医療、失業保険分含む)を会社と社員が同額支払う仕組みになっており、受給に関しては

➀老齢一時金該当者

年金一時金として一定額が一括支給されます。

老齢年金該当者

大切になってくるのが、退職前60カ月の保険料算定の基礎賃金の平均額の20%。55歳以上で、180ヶ月以上支払った者が、この平均額の20%を死ぬまで受給することができます。

更に、基礎賃金が最高額となっている方であれば、1万5000バーツ×20%=3000バーツが毎月給付されることになります。180カ月以上支払った者に対しては、超過する月数12カ月ごとに1.5%が加算されます。

参照サイト

ファイナンシャルフィールド(外部リンク)

プチ情報 〜日本の年金制度〜

日本の年金は、主に国民年金と厚生年金に分けられます。前者は20歳以上60歳未満の国民全員が必ず加入することになっている年金。後者はそれに追加して加入する年金です(主にサラリーマン等の会社員が加入)


それでは、日本国民は平均どのくらいの年金をもらっているのでしょう?

統計によれば、厚生年金の平均月額は「14万5千円」であり、男女で大きな差があるようです。


男性「18~19万円」


女性「9万円以上~10万円未満」


もしこの額をタイに当てはめてみると充分生活できるのではないでしょうか?


しかし、実際のところ皆が皆この額をもらえるとは限らないのも事実です。



https://airregi.jp/magazine/guide/1194/ / https://seniorguide.jp/article/1061180.html

医療保障のいろは

続いてタイの「医療保障制度」について。最初に言っておくと、タイは制度上、全ての国民が公的医療保障の対象となっているユニバー サル・ヘルス・カバレッジ(国民皆医療)を達成しています。種類は主に以下3つ。

「公務員医療給付制度(CSMBS: Civil Servant Medical Benefit Scheme)」

公務員用の保険。 財源は国民の税金のため別途支払う必要はない。3つの中で最も古くからある保険制度。

民間被用者の「社会保険制度(SSS: Social Security Scheme)」の傷病等給付

民間被用者の15歳以上60歳未満が加入を義務付けられる保険。現在、タイ国民の16%が加入している。保険料支払いの義務もある。

それ以外の全ての国民(農民、自営業者等、国民の約4分の3)を対象とする「国民医療保障制度(UC: Universal Coverage)」

加入は任意だが、国民の7割が加入しているメジャーな保険。別名「30バーツ保険」とも呼ばれ、手術や処方箋の支給であっても30バーツ(約100円)を支払えば良い。又財源は国民の税金、特にタバコ税や酒税が使用されているため国民からの指示も大きい。HIV等の病気も対象となっている。

*(受診時の本人負担は、2006年10月末から無料化されていたが、2012年9 月から復活 低所得者等は引き続き無料)

残念ながらタイ国籍を持つ人しか対象とはならないようです。駐在員等の方は民間保険に加入するか、日本の保険に加入することをおすすめします。タイの医療期間を実費で払った後、保険によってはその証明書を見せることで幾らか還元されます。

タイ在住者におすすめの医療保険 (外部リンク)

問題点

特に➂は夢のような保険に聞こえるかもしれないが、制約や問題を多く孕んでいます。

制度的制約

保険をかける際「病院を指定しなければならない」というのも、30バーツ診療が受けられるのは基本的に、一番近い公立病院だけだからです。しかし、レファーラルシステムも導入していることから、事前に推薦状を用意してもらい認められれば30バーツの医療費で済みます。

押し寄せる病院への負担

病院への支払いは国が行なっています。しかし、「30バーツ」という破格設定のため患者が殺到し、病院自体の経営を圧迫していることも事実。それにより、この制度を取り入れない病院が後を絶たちません。

私立病院との格差

制度を導入している公立病院のいくつかは、患者にとって「快適」な場所とは言えないものもあります。場所によってはクーラーがついていなかったり、衛生的に不潔だったりするからです。かと言って、私立病院にいけるのは富裕層だけ。現実問題として、庶民が公立病院に長蛇の列を作っている中、私立病院に通う富裕層たちは快適な空間で最先端の医療を受けられます。

富裕層からの批判

一部の富裕層からは「バラマキ政策」として30バーツ保険が非難されています。確かに、富裕層といえど、高いお金を払って医療を受ける国民がいる一方、無性で医療が受けられる制度の存在が批判の対象になるのも理解できなくもありません。

財源の不足

国民の税金だけで運営しているため、財源が十分ではないのと同時に、低所得者には30バーツではなく、無料で医療を提供していることから、今後も財源の確保に悩むであろうと予測されています。

プチ情報〜日本の医療保障〜

日本はタイに比べて医療保障制度が発達していると言えます。医療負担こそ「30バーツ」ならぬ「3割負担」ですが、その分、何処か指定の病院でしか保障が受けられない等の制約はありません(フリーアクセスの実現)


参考リンクhttps://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/14/dl/t5-10.pdf

最後に一言

いかがでしたか?「タイの年金の仕組み」や「医療保障」についての見識は深められましたでしょうか?異なる国での生活は情報も少なく大変かとは思いますが、早め早めに正確な情報を手に入れておくということが大切になってくるのではないでしょうか?