はじめまして。普段はアデコタイランドでキャリアコンサルタントをしているだいじゅです。
さて、海外勤務になり、採用活動をしなければならなくなった。なんだか、大変そうですよね。日本と海外での採用事情の違いも良くわからないし、そもそも、採用活動なんて行ったことがないという人もたくさんいらっしゃるかと思います。
この特集では、海外拠点で働かれている人事・採用担当者の方に向けて、「海外での人材採用」について、これまで私自身日本と東南アジアの企業様1,000社以上の採用活動のサポートをさせていただいた経験を踏まえ、少しでも役立つ情報をお届けしていければと思っています。
今回の記事では、採用におけるハズしてはならない原則・プロセスと、海外特有の事情を踏まえての実際的な採用のコツについて、整理してみました。わかってはいるんだけど、なかなか実践に移せないことや、会社特有の事情に合わせてカスタマイズした考え方なども書いてみました。
採用のプロセスは大きく3つ
まずは、採用のプロセスについては、簡単にいうと3つに分けることができます。
- 採用準備
- 面接
- 条件提示・入社に向けて
一番大事な部分は採用準備にあたる部分で、この部分で「採用のコンセプト」を決めることとなります。ここでしっかりとコンセプトを作り上げることで、今後の採用活動のすべてを楽にします。コンセプトさえ決まってしまえば、後は実行だけなので、精神的にも楽になりますし、不要なことで悩み続けることもなくなりますので、採用活動の9割は終わってしまったと言えると思います。
海外での採用をする時に抑えておきたいポイント(採用準備編)
まずは、採用のコンセプトを明確にするために、「何のための採用なのか?」をじっくり考えてください。ビジネスを維持するためのマンパワーを充当するためのもの、自社の弱点を補うためのもの、新規ビジネスを行うための投資など、様々な理由があるはずです。
おそらく、多くの採用担当者の方が考えたことはあるものの、実際の採用活動が始まると、あれも欲しいこれも欲しいと、コンセプトから外れていってしまうようです。過ぎたるは及ばざるが如しですので、このコンセプトには忠実に沿って採用活動を行うことが前提となりますので、しっかり考えて、納得感の強いコンセプトを作ってください。多くの採用担当者の方が無意味に採用基準を上げてしまい、自分で自分の首を締めているのが実際によくある状況です。さらに、残念ながら、苦労をして採用した人もフィット感が少なく、早期退職につながってしまうケースもよくあります。
あとは、採用のゴールを達成するために、必要な条件をリストアップしていきましょう。リストアップをする際には、ゴールを遂行するために必要不可欠な「絶対条件」と、ゴールの達成が容易になる「相対条件」とを明確にすることを忘れないでください。
この時に注意をするポイントとしては、給与水準を前提に採用計画を立てないことです。実際的には社内バランスや、プロジェクト予算などから給与水準に制限は出てきますが、ベストな人物像を明確にした上で、そのコンセプトに沿って提示できる給与水準の中で最も良い人を採用するべきです。実際に求職者が会社を選ぶ際は、給与水準だけではなく、業務のやりがいや、会社の方向性、自分がどの程度必要とされているかなど複合的な理由で決まります。確かに給与水準は大きな判断の基準ではありますが、給与水準ベースで採用を行った場合、その水準の人しか採用できません。どうせなら、会社のニーズにフィットした、「費用対効果の高い人」を採用した方がお得だと思います。
採用コンセプトを作る上で、考えるべき指標は大まかにわけると4つです。すべて採用のゴールを達成するために必要な項目です。
採用コンセプトを作る上での指標4つ
1. 必要な知識量(業界・職種経験)
効率的な採用活動を行う上で、最も重要なことは「入社時に求める知識量」です。多くの会社が、業界経験者を求めていますが、明確にその理由を言語化できる採用担当者はそう多くありません。日本人の採用であれば、より顕著になります。「社内でも少ない日本人だから、業界経験者が良い」という気持ちはわかるのですが、海外で就業を希望している日本人の数は絶対的に少ないので、業界経験者と出会える可能性は少ないです。日本人の人口に対して海外就業者は1%未満ですから、日本で採用活動を行うのと比べて100倍難しくなるとイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
MRなど入社後に半年から1年程の座学研修があるような業務ならいざ知らず、多くの場合は、入社前にテキストを読んできてもらう、OJT研修を1-2ヶ月実施するなどで、十分に業務を遂行できることがほとんどかと思います。
とは言えども、未経験を採用するのは心配かとは思います。そんな時こそ、採用コンサルタントに相談をして、意見を出させてみるといいと思います。ヒアリングを通して、「商材は異なるが、この業界であれば業務プロセスや考え方が近い」や、「自動車業界ではなく、もう少し大きなくくりで製造業での経験者に広げてみてはいかがでしょうか」などの意見を出してくれると思います。
2. 組織内での役割(職位)
採用する人物が、組織の中でどのような立場になるのかを熟考することは非常に重要です。マネジメントをする立場なのか、最前線で活躍をする人なのか。既存の組織を維持する人か、変革をしてくれる人なのか。期待する立場に応じて、求められる年齢層や給与水準などの制限がかかってくることとなります。立場が上になればなるほど、抽象的なミッションを遂行できる人が必要になりますので、面接の行い方なども考える必要がでてくるようになります。
ローカルスタッフとの関係性を考える上で、組織内での役割を十分に考えることは重要です。そもそも、ローカルスタッフとは書類上でしかやり取りをしないことが多いのに、ローカルスタッフとの協調性がある人を求めていたり、不要な資質を求めることで採用難易度が上がってしまっている可能性があります。
3. 求職者の志向性(モチベーションのありか)
上記の組織内での役割とも近い部分がありますが、「求職者の志向性は採用難易度よりも、入社後の就業継続性を考える」という思考に近いです。会社から求めることだけではなく、現在の会社の特徴を理解し、その性質にマッチする人がどのような人なのかをイメージしましょう。
たとえば、会社のルールが明確に定まっておらず、これから組織を作っていくようなフェーズの企業で、指示待ちの人を採用してもマッチしていませんし、現場の上司からはパフォーマンス不足と言われてしまうでしょうか。逆に、社内ルールが明確に決まっている会社で、効率がいいからと言ってルールを守らない人に来られてもチームを和を乱す人となります。結局のところ、人材の資質は良い悪いではなく組織に合っているかどうかですから、自社の特徴と合っている人を探すこととなります。私は日本と東南アジアの企業に向けて採用コンサルタントをさせていただいており、1,000社以上の採用活動のサポートをさせていただきましたが、海外の企業は会社によって特徴が顕著で極端であることが多いです。海外の場合は小規模であることが多く、組織の特徴というよりも、社長の特徴が強く反映されることが多く、ミスマッチが起こる可能性が日本と比べると段違いに多いです。
海外での採用活動を行う上では、業界経験や年齢などの条件はできるだけ緩和をし、求職者の志向性(モチベーションのありか)を重視した採用活動をすると、結果的に組織が安定し、パフォーマンスを発揮してくれるケースが多いと思います。
4. 語学力
海外でビジネスをしていると、日本人だけでは業務は完結せずに、多くの場合はローカルスタッフとの連携が必須になります。ただし、どの程度の連携が必要となるかは、会社や業務内容によってまちまちだと思います。
日本人担当者との商談が8割、ローカルスタッフには出荷指示を出すだけのルーティン業務を依頼するしか連携がない。それでも、ビジネスレベルの英語力を必要とするという企業はよく目にします。むやみに採用難易度を上げ、支給給与も上げる結果となり、最終的には求職者から「英語を使う頻度が少ないので・・・」と言って辞められた。ということ、実はあるあるなのです。語学力についても、「業務を遂行する上で必要不可欠」なレベルを明確にすることが重要です。
いかがでしたでしょうか?
次回は、「人事が抑えておくべきポイント【面接編】」についてご説明したいと思います。