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【海外就職イベントレポ】海外志向の若手がいま取るべき選択とは?コロナ後のアジア就職・海外キャリア|アジラボ主催

日向みく

イベント概要

世界は今、アフターコロナに向けて動き出している。先行きの見えない不確実な時代において、

海外志向の若者たちはどのような選択を取ればよいのだろうか。

11月16日(水)、アジア就職を支援する海外就職メディア「アジラボ」の主催にて、『コロナ後のアジア就職・海外キャリア』と題したオンラインイベントが開催された。本稿では、アジアを舞台に挑戦を続ける6名の登壇者により語られた、海外キャリアを切り拓くための具体的かつリアルな方法やヒントについてまとめている。

当日は20代の社会人を中心に、高校生や大学生を含む総勢50名近くが参加して議論が深まった。

登壇者プロフィール

中村 勝裕(43)
Asian Identity CEO & FOUNDER
20代で大企業を経験、シンガポール駐在を経て起業

岩堀 健太郎(40)
チェンシージャパン株式会社代表
海外歴は13年(中国、タイ、アメリカ)

藤間 隆太(35)
タイ現地採用から世界最大手コンサルへ

堀口 奏子(27)
20代でタイの人事・組織コンサル日系ベンチャーへ。前職は国内で在留外国人向けウェブメディアを運営するスタートアップ

岩﨑 里菜(29)
日本の商社を脱サラ。タイでスタートアップの営業として働きながら、和太鼓の普及活動に取り組む

井尻 龍太(34)
インド、ベトナム、タイと海外3カ国経験
海外就職メディア「アジラボ」編集長、人材紹介会社勤務

イベント内容

井尻「みなさんこんにちは!本日は僕と中村さんで進行を務めながら、アジアを舞台に挑戦するスピーカーに、アジア就職や海外キャリアに関するいろんな質問をしていきます。多様な実例を知ることで、ご自身のキャリアや人生における意思決定の材料にしてもらえればと思います」

Session① <日本から海外に出るまで>海外に出ることを決めたきっかけやタイミングは?

  • 挑戦しない人生で幸せ?答えはNOだった

井尻「みなさんが海外に出る決断をするうえで、どんな悩みやきっかけがありましたか?」

岩崎「私は新卒入社した商社で営業として働いていたんですが、残業続きで目標も見失い、心身ボロボロになってしまって。20代半ば、自分の夢や生きる意味について改めて考えたんです。『仮に今死んで納得のいく人生?』と自問自答したとき、答えはNOでした。やらない後悔よりもやって後悔する人生の方が何倍も幸せだと思い、周囲の反対のなか海外に出る決意をしました」

堀口「私は20代から海外就職への思いが強くて、タイ就職は割と躊躇なく決められました。むしろ大学3年で8ヶ月の海外インターンを決めたときの方が大変でしたね。周囲が就活モードのなか急遽1年の休学を決め、家族やゼミの先生を説得しました。学生時代の海外ボランティアも含め、小さな選択の積み重ねが今に繋がっていると思います

岩堀「僕はおふたりほど海外志向が強い人間ではなかったんですが、仕事に不満を抱えていました。エンジニアとして新卒入社した日本のシステム開発会社では、完成したシステムのお守りをするような仕事しかできず、どうしても開発する側にいきたかったんです。24歳のとき、中国のシステム開発の仕事を紹介してもらい、悩んだ末に渡航を決めました」

  • 現地で生き抜くための「武器」をもつ

井尻「海外に出るまでに日本で身につけたスキルや経験はありましたか?」

岩堀「僕はとあるIT資格を取得してから中国に行きました。もし現地で失敗しても資格があればやり直しがきくと思い、必死で勉強しましたね」

岩崎「私もタイに行く前に、日本語教師の免許をとりました。“タイで和太鼓を広める”という夢を叶えながらできる仕事はなんだろう?といろいろ考えて、日本語教師になろう!と決めたんです」

中村「おふたりのように現地で闘える武器がひとつでもあると大きな支えになりますよね。学生やインターンなら好奇心と勢いで海外に飛び込むのもアリですが、一定年齢を超えた社会人だと、即戦力としてある程度のスキルや成果が求められますし」

井尻「そうですね。あとは意外と、今あるもので自分ではそんなに強みだと思っていないことが評価されることもあると思います。僕の場合は『大企業で3年以上の勤務経験があるから』と採用理由で告げられ驚いたことがありました」

タイで和太鼓の普及活動に取り組む岩崎さん

  • 自分に合ったキャリアの積み方を見極める

中村「日本で数年働いてから海外に行くのか、駐在or現地採用など、みなさんはどうやって選択をされましたか?」

岩崎「私は当初、駐在を目指していました。積極的に社内アプローチをしていたものの、結果的に『20代女子はまだ早い』と言われてしまい、ならば違う場所に身を置こうと決めたんです。ただ同年代にも女性駐在員の方はいらっしゃいますし、会社によって方針が違うと思います」

中村「私は30代で駐在を経験した身ですが、岩崎さんのように『もう待てない』ともどかしさを抱える20代の若者は少なくない気がしますね」

藤間「海外に行くタイミングについてですが、”どこで基礎を学ぶか” という視点も大切かと思います。海外拠点だと従業員の数が少なく、教育システムが整っていないこともザラです。その場合、上司に定期的なフィードバックを依頼するとか、自発的にインプットやOJTの機会を増やすことが必要になってくるかと」

中村「たしかにそうですね。海外で経験を積みつつ主体的にインプットしていくのか、研修制度や教育システムが整った日本で基礎を学んでから海外に出るのか。自分に合ったキャリア選択が肝になりそうです」

  • 求人探しにSNSも有効

井尻「就職先を探すうえで、情報収集はどのように行いましたか?」

堀口「私はTwitterから今のお仕事に繋がりました。海外志向の方を中心にフォローしていたら、ある日、フォロワーさん経由でタイ現地の営業職の募集が流れてきたんです」

中村「今っぽいですね。これまではエージェント経由が主流でしたが、SNSなどネットワークの力も侮れなくなっています。海外在住日本人同士の繋がりで、良い話がポロっと舞い込むこともありますし」

  • 期限を決めて踏ん切りをつける

井尻「海外に出る前に、挫折した場合のバックアッププランや、結婚や出産などを含めたライフプランは考えていましたか?」

堀口「私はあまり綿密な計画は立てないタイプです。日本にいないと結婚できないとも思っていないですし、なるようになるかなと(笑)モヤモヤするタイミングは人生の変わり目だと思い、そのときの気持ちに正直に従って動くようにしています

岩崎「私はけっこう悩みましたね。タイで叶えたい夢がある一方で、30歳までに結婚したいという乙女の願いもあって(笑)。なので、”2年” と期限を定めて、できるところまでやろうとタイに来ました。まぁ、結果的に延長することになりましたが(笑)」

中村「なるほど。とりあえず数年と期限を決めると、踏ん切りがつきやすいかもしれないですね。会社側も 、人が数年単位で入れ替わることを見越して経営しているところが多いですし」

Session② <海外に出たあと>海外就職、現地採用、その後のキャリアパス

  • 柔軟なプラン変更も大切

井尻「自分の意思で海外就職したものの、”こんなはずじゃなかった” という失敗や挫折経験はありましたか?」

岩堀「中国に渡った当時は語学力もシステム開発のスキルもゼロで、めちゃくちゃ苦労しました。当時の月給は6万円。正直想像と違いすぎてショックでしたね(笑)。この土俵でまともに勝負し続けてもダメだと悟り、マネジメント側になるよう方向転換をしたんです。それがキャリアアップに繋がりました」

岩崎「私も失敗や挫折だらけで、たくさん泣きました。日本語教師の仕事は、給料振込の遅延とか次々と問題が勃発して、半年で辞めちゃったんです。なんとか他にできることを探そうと死ぬ気で就活をして、最終的には内定を8社いただき、今のお仕事ができています」

堀口「私はまだタイに来て半月ほどですが、想像以上に語学面で苦戦中です。社内ミーティングやタイ人スタッフとのコミュニケーションなど、英語での意思疎通が思うようにいかないことも多くて。目指すレベルとの差を埋められるように、日々勉強に励んでいます」

井尻「人材紹介の仕事をしていると、特にリモートでの就職活動を経て海外就職する方の多くが、理想と現実のギャップに悩まれています。みなさんのように柔軟性をもって動いたり努力したりすることは大切ですよね。挫折経験も次のステップへの大きな糧になると思います」

タイの職場での堀口さん

  • 会社選びは社長の価値観や会社の登用方針に注目

中村「海外就職の際、良い職場に出会えるか不安な方も多いと思います。どういう観点で会社を選べばいいでしょうか?」

岩堀「海外拠点だと社長の判断に多くが委ねられるので、社長の価値観や方針が自分のやりたいこととマッチしているかどうかを見極めることが重要ではないでしょうか」

中村「そうですね。現地採用の就活では、社長が面接に出てくることも珍しくないので、直接質問してみても良いかもしれませんね」

藤間「私も同意です。一方で、社長が2、3年で変わるケースも多いので、会社の登用方針を調べておくこともおすすめします。社長が変わったタイミングで現地採用の登用方針が変わり、役職がいきなり下がった知人もいまして。あとは、3年以内に自分のレベルアップが見込めるかというのも大切な観点だと思います」

  • 市場価値を上げられるかは自分次第
参加者へのアンケート結果。経済面や語学力に関する不安が多かった。

中村「海外に出て果たして稼げるのか、キャリアのプラスになるのかというのも非常に気になる部分ですよね。みなさんは海外に出たことで、ご自身の市場価値が上がったと感じますか?」

岩崎「そうですね。どんな環境でも生き抜く力を養えたという意味で、人としてレベルアップできたと感じています。仕事面では幅広いスキルが身についたし、成果に比例して報酬も上がるので、タイ就職1社目に比べて今は2倍のお給料をいただいています

藤間「私も昇給や昇進のスピードが日本より早いことは大きなメリットだと思います。ただ、海外就職しなかった場合と今の市場価値を比較することはできませんし、自分が選択した範囲のなかで成長し続けることが大切かなと思います」

井尻「そうですね。海外に出ると若いうちから身の丈以上のチャンスやポジションを得やすく、帰国後は海外経験という希少性も大きな武器になります。でもそこに満足して挑戦や努力を怠ると、日本に帰ったときの選択肢がなくなるリスクもあるので、自分のキャリア選択に責任をもつことが大事ですよね」

  • 多様化するキャリアパス

井尻「みなさんはご自身の海外キャリアを、どのようにして現在の仕事に繋げてこられたのでしょうか?」

岩堀「目の前のことをがむしゃらに頑張っていたら、お客さんがチャンスをくれてタイで起業しました。海外に出て16年、今は上場を目指していますが、まだキャリア形成の途上にあります」

タイのメンバーと(岩堀さん)

藤間「私は一度日本に戻りましたが、7年弱の海外コンサル経験を評価いただいて、再びタイで新しい挑戦をさせてもらっています。次回のイベントでこの場に講演者として登壇できるのだろうか、すなわち解雇されて無職になってないだろうかといった不安すら持っています。しかし、努力を積み重ねた先で新たなチャンスを掴めると信じ、日々頑張っています」

中村「最近は、駐在で経験を積んで起業する方や、海外就職で市場価値を高めて日本で転職する方もいて、チャンスの幅が広がってきていますよね。みなさんが海外で挑戦し続ける姿に僕も勇気をもらいます!」

参加者の声

質疑応答では、時間内に回答しきれないほど活発に質問が飛び交い、議論が盛り上がった。

(一部の質問と回答)

Q、自分に合う仕事や武器はどうやったら見つけられるでしょうか?

A、自己分析の機会を設け、好きや得意を掘り下げてみる。周囲に『私の強みってなに?』と聞いてみると意外な発見があるかも。海外に出ても日本での実務経験は重要視されるので、今の仕事を極めて実績を残すと立派な武器になる。営業経験と語学力を掛け合わせるなど、スキルの希少性を高めるのも良い。

Q、20代後半です。パートナーや親のことを考えると気軽に動けず、海外に出るタイミングを迷っています。

A、海外に身を置く期限を決めて互いの妥協点を見つける。東南アジアは日本から近いので気軽に行ったり帰ったりできるし、無料でビデオ通話ができる時代なので、想像以上に心理的距離を保てるのでは?

またイベント終了後のアンケートでは、以下のような感想が寄せられた。

・海外で活躍する先輩たちのリアルな実体験を聞き、海外就職へのイメージが湧いた
・海外に出るタイミングや武器の見つけ方など多くのヒントをもらえた
・生配信ならではの温度感を得られた
・タイの日系企業の動向についてもっと知りたい

まとめ

グローバルな環境で生き抜くために、まずは深く自己分析をして、自分の軸や性格に合ったキャリア選択をすること。また現地で支えとなる武器や、想定外の困難に屈しないタフネスや柔軟性がいかに重要か語られた。アジアを舞台に挑戦を続けるスピーカー6名の熱量が参加者に伝わる90分となった。

スピーカーのSNS情報

中村 勝裕:Jack Nakamura

岩堀 健太郎:Kentaro Iwahori

藤間 隆太:オンヌットの豚

堀口 奏子:かなこ

岩﨑 里菜:Rina

井尻 龍太:リョータ

<取材・執筆>日向みく

バンコク在住ライター。岡山出身。生き方や働き方、ビジネスなど幅広いテーマで、おもしろい人や企業への取材・インタビュー記事を執筆中。世界41ヵ国に訪問歴がある旅好きです。好きなタイ料理はガパオライス。